2025年4月に子供が1歳になり職場復帰予定ですが、保育所に入れなかった時の育児休業給付金支給対象期間延長手続きに必要な書類について教えてください。

これまでは、保育所等に入所できないことを理由に育児休業給付金の支給対象期間を延長する際には、「市区町村の発行する入所保留通知書」を添付することで延長の要件の確認をしていました。
令和7(2025)年4月からは、これまでの確認に加え、保育所等の利用申し込みが、速やかな職場復帰のために行われたものと認められることが必要になります。そのため、提出書類として「保育所等利用申込書の写し」が追加されており、申込の際、申込書や申込画面を印刷して保管しておく必要があります。来年4月の保育所の入所申込は、今年10月頃から始まりますので、申込書の写しの保管を従業員に周知する必要があります。また、「育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書」も提出書類に追加されました。
最低賃金、社会保険の適用拡大については、解説をご確認下さい。

育児休業給付金の延長手続きの見直し、最低賃金、社会保険の適用拡大

Ⅰ 育児休業給付金の延長手続きの見直し

1.手続き見直しの経緯

 これまでも度々ハローワークから育児休業の延長について適正利用を呼び掛けるリーフレット等が発行されていましたが、自治体から「保育所等への入所意思がなく、給付延長のために申し込みを行う者への対応に時間が割かれる」「意に反して保育所等への入所が内定となった方の苦情対応に時間を要している」として見直しの要望があったため、保育園の利用調整における自治体の事務負担を軽減し、制度の適切な運営を図るためハローワークにおいて延長可否を判断することを明確化する方向で検討が行われ、手続きの見直しが行われました。

2.育児休業給付金の支給対象期間延長要件

 新たに追加された要件としては、下記表の2②、③です。保留されることを目的としてあえて遠い保育園に申し込みをしたり、育児休業給付を延長するために保育園への入所申し込みをしたうえで入所保留希望の意思表示をすることのないように追加された要件です。育児休業の延長を目的とした、保育所等への入所意思がない入所申し込みは、速やかな職場復帰のために行われたものであるとは認められないためです。

速やかな職場復帰のために保育所等における保育の利用を希望しているものであると公共職業安定所長が認めること ※①~③すべてを満たす必要があります

  1. 原則として子が1歳に達する日の翌日以前の日を入所希望日として入所申し込みをしていること。
  2. 申し込んだ保育所等が、合理的な理由なく自宅から通所に片道 30 分以上要する施設のみとなっていないこと
    ※「合理的な理由」として認められるのは、原則として次の a~e のいずれかに該当する場合です。
    • 申し込んだ保育所等が本人または配偶者の通勤経路の途中にある場合(本人または配偶者の勤務先からの片道の通所時間が 30 分未満の場合を含みます。)
    • 自宅から 30 分未満で通うことができる保育所等がない場合
    • 自宅から 30 分未満で通うことができる保育所等の全てについて、その開所時間または開所日(曜日)では職場復帰後の勤務時間または勤務日(曜日)に対応できない場合
    • 子が疾病や障害により特別に配慮が必要であり、 30 分未満で通える保育所等は全て申し込み不可となっている場合(医師の診断書、障害者手帳の写し等が必要です)
    • その他、きょうだいが在籍している保育所等と同じ保育所等の利用を希望する場合、30分未満で通える保育所等がいずれも過去3年以内に児童への虐待等について都道
    • 府県または市区町村から行政指導等を受けていた場合も「合理的な理由」として認められます。
  3. 市区町村に対する保育利用の申し込みに当たり、入所保留となることを希望する旨の意思表示をしていないこと
    ※入所申込書において、「保育所等への入所を希望していない」、「速やかに職場復帰する意思がない」、「選考結果にかかわらず育児休業の延長を希望する」などの記載等があり、保育所等への入所の意思や速やかな職場復帰の意思がないことが明白な場合は、要件を満たしません 。

(厚生労働省「2025年4月から保育所等に入れなかったことを理由とする育児休業給付金の支給対象期間延長手続きが変わります」)

3.支給対象期間延長手続きに必要となる書類

 今までは①のみでしたが、新たに②と③が追加になりました。①の発行年月日についても要件が細かくなりました。書類の準備について特に注意が必要となるのは③です。

  1. 市区町村が発行する保育所等の利用ができない旨の通知(入所保留通知書、入所不承諾通知書など)
    →以下のいずれか1通の提出が必要です。
    1. 発行年月日が子の1歳の誕生日の2か月前の日以後の入所保留通知書
    2. 発行年月日がイよりも前の日付の入所保留通知書しかなく、通知書の有効期限内は新たな通知所が発行されない場合は、「育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書」の理由欄にその旨を記載のうえ、直近の入所保留通知書

    詳細は、厚生労働省「保育所等に入所できない場合の育児休業給付金の支給対象期間延長について」(https://www.mhlw.go.jp/content/001269700.pdf)をご確認下さい。

  2. 育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書
    →追加された要件について本人の意思確認をするための書類です。
    様式に必ず本人が記載し、事業主を通して提出する必要があります。
    手書用PDFと入力用PDFが厚生労働省のホームページに用意されています。
    育児休業給付金の支給対象期間延長手続き|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
  3. 市区町村に保育所等の利用申し込みを行ったときの申込書の写し
    →現時点では保育所の利用申し込みの控書類の発行を行っていない自治体が多いため、利用申し込みを行う際には、必ず申込書の写し(電子申請で申し込みを行った場合は、申込内容を印刷したもの、または、申し込みを行った画面を印刷したもの)をとって保管しておく必要があります。

【重要】手続き方法の変更は2025年4月からですが、4月入所のための保育所の申し込みは前年度の10~12月頃が一般的です。申し込みの際には必ず申込書の写しを取って保管しておくよう、速やかに現在育児休業期間中の従業員に周知することが必要となります。また、やむを得ない事情がないにも関わらず要件を満たしていない場合は育児休業給付金支給対象期間の延長ができない場合もありますので、新しい要件についても育児休業中の従業員への周知が必要です。

育児休業給付金支給対象期間 | 延長事由認定申告書

Ⅱ 最低賃金の引上げ

1.最低賃金の引上げ

 厚生労働省は、7月25日に中央最低賃金審議会による令和6年度地域別最低賃金額改定の目安を発表しました。同審議会は全国をA~Cの3区分に分けて引き上げ額の目安を示しますが、24年度の国の目安は3区分とも一律で50円でした。続く8月29日に地方最低賃金審議会の答申による24年度の地域別最低賃金の改定額では、27県が人手不足や物価上昇への対応として、上乗せを決め、現時点で以下のように決定されています。
 なお、最低賃金の政府目標は30年代半ばに全国平均で1500円を掲げています。

【令和6年度 地域別最低賃金改定状況】

【令和6年度 地域別最低賃金改定状況】
【令和6年度 地域別最低賃金改定状況】

※岩手、徳島に関しては2024年9月19日現在未決定です。

(厚生労働省HP 地域別最低賃金の全国一覧)

2.賃金に関する指標

 ご参考までに、最低賃金引上げの参考とされる賃金に関する指標について「中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告」(令和6年7月24日)に沿って確認しておきます。
2024年の春季賃上げ妥結状況における賃金上昇率は、連合の春闘第7回(最終)回答集計結果(7月3日公表)では、全体の賃上げ率は5.10%(前年3.58%)、中小賃上げ率は4.45%(前年3.23%)となっており、昨年を上回る33年ぶりの高い水準となっています。また、有期・短期間・契約等労働者の賃上げ額(時給)の加重平均の引き上げ率の概算も昨年を上回る5.74%となっています。
 次に、2024年の経団連春季労使交渉月例賃金引上げ結果(第1回集計)では、大手企業が5.58%(前年3.99%)、中小企業が3.92%(前年3.00%)となり、いずれも昨年を上回っています。
 さらに、日本商工会議所による中小企業の賃金改定に関する調査の正社員の結果(2024年6月5日)では全体で3.62%、20人以下の企業で3.34%、パート・アルバイトの結果では全体で3.43%、20人以下で3.88%となっています。
 厚生労働省による「賃金改定状況調査結果」(30人未満の小規模な企業のみを対象)では、2024年6月の賃金上昇率は2.3%、継続労働者に限定した数字では2.8%となり、いずれも昨年の結果を上回っています。
 大企業を対象に含む結果である春季賃上げ妥結状況における賃金上昇率と、30人未満の小規模な企業のみを対象とする賃金改定状況調査結果をみると、企業規模によって賃金上昇率の水準には開きが見られる一方、企業規模に関わらず昨年を上回る賃上げの状況が見られます。

3.最低賃金の計算方法

 最低賃金の計算方法は次の通りです。

【月給の場合の計算式】
月給÷1ヶ月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
※1ヶ月平均所定労働時間=年間所定労働日数×1日の所定労働時間÷12

Ⅲ パート社会保険の適用拡大(厚生年金保険の被保険者数51人以上の企業)

 本年10月から、従業員数51人以上の会社は、パートの社会保険の適用が拡大されます。
 日本年金機構は、51人以上の要件を満たす企業に対し、事前に「特定適用事業所該当事前のお知らせ」を送付します。また、10月頃に「特定適用事業所該当通知書」が送付される予定です。従業員数は厚生年金保険の被保険者数が51人以上かどうか判断します。
 従業員に該当対象者がいるかどうかは、年金事務所は把握していませんので、改正により、新たに被保険者資格を取得する短時間労働者がいる場合は、会社が「被保険者資格取得届」を提出する必要があります。
 改正後の要件は、4分の3基準を満たさない短時間労働者のうち、次の1から4までの4つの要件を満たす場合に、新たに厚生年金保険・健康保険の被保険者となります。

  1. 週間の所定労働時間が20時間以上であること。
  2. 月額賃金が8.8万円以上であること。
  3. 学生でないこと。
  4. 特定適用事業所(厚生年金保険の被保険者数101人以上)に使用されていること。

 社内手続きの流れを載せておきます。

  1. 加入対象者の把握(まずは社内の加入対象者を把握)
  2. 社内周知(社内の加入対象者に周知)
  3. 従業員とのコミュニケーション(必要に応じて説明会や個人面談を実施)
  4. 届出(被保険者資格取得届)