出産関連の手続きの多くは、会社が直接または社会保険労務士を通して手続きを行いますが、手続きの種類や準備書類も多く煩雑です。
中でも雇用保険の育児休業給付金については平成29年10月1日より2歳まで期間延長ができるようになり、人によっては2度の延長手続きが必要となります。
ここでは今一度「育児休業給付金の延長手続き」について確認するとともに、「退職予定者の育児休業給付金」について触れていきたいと思います。
なお、出産関連の主な制度および手続きの内容や手続時期、ご準備いただく書類等については【別表】にまとめましたのでそちらをご参照ください。
【1】育児休業給付金の延長手続き
まずは、育児休業給付金の支給期間延長の要件について確認したいと思います。下記の①または②に該当する場合は、支給期間の延長ができます。
①育児休業の申出に係る子について、保育所等(※1)における保育の実施を希望し、申込みを行っているが、その子が1歳に達する日(※2)又は1歳6か月に達する日後の期間について、当面その実施が行われない場合。
※1 ここでいう保育所等は、児童福祉法第39条に規定する保育所等をいい、無認可保育施設はこれに含まれません。
※2 いわゆる「パパママ育休プラス制度」の利用により育児休業終了予定日とされた日が子の1歳に達する日以降である場合は休業終了予定日
重要!
あらかじめ1歳に達する日又は1歳6か月に達する日の翌日について保育所等における保育が実施されるように申込みを行っていない場合は該当しません。申し込みを失念しないよう注意が必要です。
特に2度目の延長申請の際には、1度目の延長申請の時にした保育所の申込みの有効期限がいつまでなのかを気に留めておく必要があります。1度目の延長申請の時の申込みが有効であると思っていたら期限が切れていて支給期間の延長ができなかった、という事例も少なくありません。
保育所等による保育の申込み時期、申込みの有効期限等については、ご本人様から市町村にご確認願います。
②常態として育児休業の申出に係る子の養育を行っている配偶者であって、その子が1歳に達する日又は1歳6か月に達する日後の期間について常態としてその子の養育を行う予定であった方が以下のいずれかに該当した場合
- 死亡したとき
- 負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により育児休業の申出に係る子を養育することが困難な状態になったとき
- 婚姻の解消その他の事情により配偶者が育児休業の申出に係る子と同居しないこととなったとき
- 6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14週間)以内に出産する予定であるか又は産後8週間を経過しないとき(産前休業を請求できる期間又は産前休業期間及び産後休業期間)
【手続き方法】
育児休業の申出に係る子について1歳に達する日後の延長、1歳6か月に達する日後の延長について、それぞれ延長手続が必要です。
具体的には、
- 「育児休業給付金支給申請書」の「支給対象となる期間の延長事由-期間」の欄に、事由に該当する番号と実際に延長する期間を記載する。
- 賃金台帳・出勤簿に加えて延長事由に該当することを確認することができる書類(下記参照)を添付する。
㋐延長事由①の場合
「市町村が発行した保育所等の入所保留通知書など当面保育所等において保育が行われない事実を証明することができる書類」
書類には、
・申出に係る子の氏名
・育児休業申請者の氏名(配偶者の氏名で申込をした場合、別途住民票等の書類が必要になります。)
・保育希望開始日
・申込日
の記載が必要です。
※市町村からの発行が困難な場合は、ハローワークにご相談ください。
㋑延長事由②(1)及び(3)の場合
「世帯全員について記載された住民票の写し及び母子健康手帳」
㋒延長事由②(2)の場合
「保育を予定していた配偶者の状態についての医師の診断書等」
㋓延長事由②(4)の場合
「母子健康手帳」
【手続き時期】
- 子が1歳に達する日(※2)(または子が1歳6か月に達する日)前の支給対象期間について、子が1歳に達する日(または子が1歳6か月に達する日)以後最初に育児休業給付金支給申請書を提出する際
- 子が1歳に達する日(※2)(または子が1歳6か月に達する日)以後の日を含む支給対象期間について育児休業給付金支給申請書を提出する際
※2 いわゆる「パパママ育休プラス制度」の利用により育児休業終了予定日とされた日が子の1歳に達する日以降である場合は休業終了予定日
例:子の誕生日が平成29年12月10日、育児休業開始日が平成30年2月4日で2か月毎に育児休業給付金支給申請をする場合、子が1歳に達する日は誕生日前日の平成30年12月9日で、延長をしない場合はその前日の平成30年12月8日までが支給期間となっている。
1回目(H30/2/4~H30/4/3分)
2回目(H30/4/4~H30/6/3分)
3回目(H30/6/4~H30/8/3分)
4回目(H30/8/4~H30/10/3分)
5回目(H30/10/4~H30/12/3分)←子が1歳に達する日前の支給対象期間
6回目(H30/12/4~H30/12/8分)
↓
6回目(H30/12/4~H31/2/3分)←子が1歳に達する日以後の日を含む支給対象期間
手続き時期(1) 5回目の支給申請を平成30年12月9日以後にする際に延長申請を行う
手続き時期(2) 6回目の支給申請をする際に延長申請を行う
【2】退職予定者の育児休業給付金について
育児休業を取得する社員が職場復帰しない(退職する)場合、育児休業給付金の支給は、その退職の意思表示の時期によって変わってきます。
1.育児休業給付金の受給開始時に退職の意思表示がある場合
育児休業の当初から離職を予定している場合、育児休業給付金は支給対象外となります。
東京ハローワークHPの以下のQ&Aが参考になります。
http://tokyo-hellowork.jsite.mhlw.go.jp/kakushu_jouhou/koyouhoken/koyouhoken/QA/ikujikyuugyoukyuuhu_qa.html
離職を予定している場合は?
今回、当社における従業員が、妊娠・出産のため離職することとなりました。当社では、離職する前に育児休業を取得することができますが、このような場合でも、育児休業給付を受けることはできますか。
できません。
育児休業給付は、育児休業取得後の職場復帰を前提とした給付金です。
このため、育児休業の当初からすでに離職を予定しているのであれば、育児休業給付の支給対象とはなりません。
なお、本来は、育児休業給付を受けることができないにもかかわらず、不正な手段により育児休業給付の支給を受け、または受けようとした場合(実際に受けたか否かを問いません。)は、不正受給の処分を受けることとなりますので、申請者本人及び事業所担当者のご理解・ご協力をお願いいたします。
2.育児休業給付金を受給中に退職の意思表示があった場合
例えば、育児休業給付金受給中に、保育園に入れないといったことから退職の意思表示があったようなケースです。この場合は退職日の属する支給単位期間は支給されず、その一つ前の支給単位期間までは支給されるということになります。受給中の場合は、退職の意思表示が退職日より前になされていても、退職日をベースに考えることになります。また、返還命令などもなされません。