改正健康増進法により求められる受動喫煙対策

健康増進法が改正されましたが、職場の受動喫煙防止対策はどこまでが義務なのでしょうか?現在の喫煙ルームは改正法のガイドラインが求める技術的基準を満たしていませんが、これを満たすように変更が必要でしょうか。

貴社が施設の改修を行えるのであれば、喫煙ルームを改修し、技術的基準(図表3ガイドライン抜粋参照)を満たす必要があります。
貴社が設備の所有者ではなく改修できず、管理権原者(施設等の設備の改修等を適法に行うことができる権限を有する者)が技術的基準を満たす喫煙専用室を設置しない場合、貴社が設置した喫煙ルームは技術的基準を満たしていないので、貴社が管理者(管理権原者とは別に、事実上現場の管理を行っている者)として、喫煙禁止場所に灰皿等を置くことになるため、法違反になる可能性があります。
また、技術的基準を満たしていない喫煙専用室での喫煙は喫煙禁止場所での喫煙となり得ますので、禁止されることになると考えます。

1.健康増進用の改正

 改正前の健康増進法では、多数の者が利用する施設を管理する者に対し、受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずる努力義務を定めていました。しかし、依然として、受動喫煙に遭遇する非喫煙者が多いことがわかっています。こうした経緯から、2018年7月、多数の者が利用する施設等の類型に応じて、その利用者に対し、一定の場所以外での喫煙を禁止するとともに、施設等の管理権原者が講ずべき措置等について定める法改正が行われ、2020年4月1日に全面施行となります。
改正健康増進法第29条は、何人も特定施設等の喫煙禁止場所で喫煙してはならないと定めています。職場は第二種施設となりますが、第二種施設の場合、屋内は禁煙(喫煙禁止場所)となります。ただし、管理権原者は技術的基準満たした喫煙専用室を設けることができます。喫煙ルームが技術的基準を満たしていない場合や喫煙禁止場所に灰皿等を置いている場合は、都道府県知事の勧告、公表、命令の対象となり、これに従わない場合は、50万円以下の罰金の対象となります。

【健康増進法の整理】
  • 何人も特定施設等においては、次の各号の特定施設等の区分に応じて、喫煙禁止場所で喫煙してはならない(第29条)。
    第一種施設(病院等)…特定屋外喫煙場所以外での喫煙は不可
    第二種施設(事務所等)…喫煙専用室以外での喫煙は不可
  • 特定施設等の「管理権原者等」(管理権原者と施設の管理者)は、喫煙禁止場所に灰皿等を置いてはならない(第30条)。
  • 第二種施設では、「管理権原者」が喫煙専用室(技術的基準に適合した室)を定めることができる(第33条)。
  • 第二種施設では、屋外は規制の対象外だが、喫煙場所を作る場合は、受動喫煙を生じさせることがない場所とするように配慮しなければならない。

2.管理権原者等の主な責務

管理権原者・管理者には、次の通り受動喫煙を防止するための責務があります。

(図表1 東京都福祉保健局「施設管理者向けハンドブック(第2版)」2頁)

3.職場における受動喫煙防止対策について

事務所などの第二種施設の規制内容は図表2の通りとなります。例えば、自社の喫煙ルームが「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン」(令和元年7月1日 基発0701第1号別表1(図表3))に定める基準を満たしていない場合は、①喫煙ルームの改修を行う、②屋内は禁煙とし屋外喫煙場所を設ける、③全面禁煙などの措置を講じる必要があります。
その他、職場の受動喫煙防止対策については、衛生委員会等の場を通じて、労働者の受動喫煙防止対策についての意識・意見を十分に把握し、事業場の実情を把握した上で、各々の事業場における適切な措置を決定することなどが定められていますので、ガイドラインをご確認下さい。

(図表2 東京都福祉保健局「施設管理者向けハンドブック(第2版)」8頁)

喫煙専用室の基準

2 第二種施設

事業者は、第二種施設内に喫煙専用室又は指定たばこ専用喫煙室を設置しようとする場合は、次に掲げる事項を満たすこと。

(1) 喫煙専用室
  1. 次に掲げるたばこの煙の流出を防止するための技術的基準に適合すること。
    • 出入口において、室外から室内に流入する空気の気流が、0.2 メートル毎秒以上であること。
    • たばこの煙が室内から室外に流出しないよう、壁、天井等によって区画されていること。
    • たばこの煙が屋外又は外部の場所に排気されていること。
  2. 喫煙専用室の出入口及び当該喫煙専用室を設置する第二種施設等の主たる出入口の見やすい箇所に次に掲げる必要事項を記載した標識を掲示しなければならないこと。
    なお、喫煙専用室を撤去するときは、当該標識を除去しなければならないこと。

    • 喫煙専用室標識
      ・当該場所が専ら喫煙をすることができる場所である旨
      ・当該場所への 20 歳未満の者の立入りが禁止されている旨
    • 喫煙専用室設置施設等標識
      ・喫煙専用室が設置されている旨
  3. 喫煙専用室へ 20 歳未満の者を立ち入らせてはならないこと。

(図表3 職場における受動喫煙防止のためのガイドライン(別紙1)より抜粋)