男性の育児休業取得と諸制度

 昨今では男性の育児休業取得が増加傾向にあり、2016年にはわずか2.65%だった日本の男性の育児休業取得率は、2018年には6.16%までと2倍以上に上昇しました。とはいっても女性の育児休業取得率82.2%と比べるとまだまだ低いのが現状で、取得日数についても6割近くが5日未満、8割が2週間以内と短期間となっています。
 昨年は小泉進次郎環境大臣の「育休取得」が話題となり、批判もあったものの育児休業取得を希望する男性の背中を押す好機となり、また、今年になって政府が育児休業給付金の支給水準引き上げの検討に入るなど、今後さらに男性の育児休業取得率が上昇することが期待されます。
 以下では、父親の育児休業の取得推進のための諸制度について紹介いたします。

●父親が利用できる雇用保険、社会保険の制度について

  1. 育児休業給付金の受給(雇用保険制度)
  2. 育児休業期間中の厚生年金保険料、健康保険料の本人負担分、事業主負担分の免除(厚生年金保険・健康保険)
  3. 養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置(厚生年金保険)
  4. 「パパ休暇」
  5. 「パパ・ママ育休プラス」

①~③については、母親が育児休業を取得する場合と同様の制度ですので割愛し、ここでは④「パパ休暇」と⑤「パパ・ママ育休プラス」について解説いたします。

1.「パパ休暇」について

「子の出生後、父親が8週間以内に育児休業を取得した場合」とは
→出産後8週間(母親の産後休業期間に相当する期間)以内に、父親が育児休業を取得、終了している、ということ。
 出産後8週間以内に父親が育児休業を開始していても、出産後8週間経過後も引き続いて育児休業を継続取得する場合は再度の育児休業の取得は出来ません。

 例えば、産後8週間以内の母親にとって肉体的・精神的負担の大きい時期に、父親が1回目の育児休業を取得、終了し、一旦は職場復帰してから、予防接種や検診で忙しくなる頃に再度育児休業を取得する、ということが可能となります。

2.「パパ・ママ育休プラス」制度について

(1)育児・介護休業法では、原則として下記の期間、日数で取得できることとなっています。
  1. 子が満1歳になるまでの間(期間)
  2. 産後休業を含めて最大1年間(日数)

「パパ・ママ育休プラス」制度では、①の部分が2か月延長され、育児休業可能期間が1歳2カ月までとなります。但し、②の休業可能日数については、最大365日(閏日を含む場合は366日)と変わりなく、日数が2か月分増えるわけではありません。

(2)要件についての詳細

上記の要件で「本人」とはこの制度を利用して子が1歳を超えた期間にかかり育休を取得する者を指します。次に示すのは、上記の要件について、典型例としてパパが1歳2ヵ月まで延長するケースに置き換えたものです。

  1. ママが子が1歳に達するまでに育児休業を取得し終了していること
  2. パパの育児休業開始予定日が、子の1歳の誕生日以前(誕生日を含む)であること
  3. パパの育児休業開始予定日は、ママがしている育児休業の初日以降であること
(3)育児休業給付金給付率について

育児休業給付金は、現行の制度では育児休業開始から6か月間は給付率67%、その後子が1歳までは50%となっていますが、パパ・ママ育休プラス制度を利用することで、2人合わせて子が1歳2カ月まで67%の給付を受けることも可能となります。

(4)パパ・ママ育休プラス制度を利用した育児休業の取り方について

パターン1について(要件①~③を満たしている)

パパ休暇を利用して産後8週間以内に1回目の育休をしていても可。パパ、ママの育児休業が逆の場合でも可。
 ママ(パパ)→産休からそのまま育休へ入って子が1歳に達して育休終了
 パパ(ママ)→子が1歳の誕生日から1歳2か月まで育休取得

パターン2について(要件①~③を満たしている)

パパ休暇を利用して産後8週間以内に1回目の育休をしていても可。パパ、ママの育休が逆の場合でも可。
 ママ(パパ)→産休からそのまま育休へ入って子が1歳に達して育休終了
 パパ(ママ)→子が1歳になる前から1歳2か月まで育休取得

パターン3について(要件①~③を満たしている)

パパ休暇を利用して産後8週間以内に1回目の育休をしていても可。パパ、ママの育児休業が逆の場合でも可。パパとママの育休は連続していなくても要件を満たしているので可。
 ママ(パパ)→産休からそのまま育休へ入って子が1歳なる前に育休終了
 パパ(ママ)→子が1歳になる前から1歳2か月まで育休取得

注意!について(要件③を満たしていない)

 この例では、3要件の「本人」となるのがママとなり、要件③を満たしていない。
 この例で、ママの育休開始日がパパの育休開始日以降であれば要件を満たすことになる。

(5)パパ・ママ育休プラス制度を利用する場合の注意点
  1. 育児休業給付金の制度(雇用保険)、厚生年金保険料・健康保険料の免除制度(社会保険)、どちらの手続きにおいても、初回の申請時に、「パパ・ママ育休プラス制度」を利用することを明記する必要があります。初回申請時に明記しない場合は、「パパ・ママ育休プラス制度」を利用できなくなります。そのため、育児休業を取得する社員がいる場合、それが女性であっても男性であっても「パパ・ママ育休プラス制度」を利用するかどうか確認して手続きを行う必要があります。具体的には、「パパ・ママ育休プラス制度」を利用して1歳2カ月まで育児休業可能期間を延長する社員の所属する会社が、申請様式に「パパ・ママ育休プラス制度」利用についてのチェック欄にチェックを入れて手続きをします。
  2. 子が1歳2カ月を過ぎても保育園等に入れる見込みがない等、育児休業を父母のどちらかが延長する場合は、通常は1歳~1歳6カ月の延長、1歳6カ月~2歳の延長、と手続きを行いますが、「パパ・ママ育休プラス制度」を利用している場合は、1歳2カ月~1歳6カ月の延長、1歳6カ月~2歳の延長、と手続きをすることになります。