1. 新型コロナウイルスが令和5年5月8日から感染症法上の位置付けが5類感染症へ変更されましたが、会社が留意しておく事項について教えて下さい。
  2. 令和6年4月1日からの障害者雇用に関する改正について教えて下さい。

  1. 5類感染症への変更により、感染者、濃厚接触者ともに感染症法に基づく外出自粛の規制は無くなるため、従業員が感染者や濃厚接触者になった場合の対応について、給与の取扱も含め検討しておく必要があります。
  2. 令和6年4月に障害者法定雇用率が2.5%、令和8年7月に2.7%に引き上げられます。また、週10時間以上20時間未満の精神障害者、重度身体障害者及び重度知的障害者について、雇用率上、0.5カウントとして算定できるようになります。

新型コロナウイルスの5類移行に伴う留意点、障害者雇用の改正

1.新型コロナウイルス感染症の5類感染症への変更による留意点

 新型コロナウイルス感染症について、令和5年5月8日から感染症法上の位置付けが5類感染症へ変更されました。変更に伴い留意すべきポイントについて、整理いたします。

(1)新型コロナウイルスに感染した場合の考え方について

 5類感染症への変更により、感染者、濃厚接触者ともに感染症法に基づく外出自粛の規制は無くなりました。企業は従業員が感染者や濃厚接触者になった場合の対応について、検討しておく必要があります。また、これまで感染症法の外出自粛規制に沿って、感染者や濃厚接触者が出勤しない期間を無給にしていた企業において、給与面でもどのような取扱いにするか、検討する必要があります。
厚生労働省は、「例えば感染したことや発熱などの症状があることのみをもって一律に労働者に休んでいただく措置をとる場合のように、使用者の自主的な判断で休業させる場合は、一般的には『使用者の責に帰すべき事由による休業』に当てはまり、休業手当を支払う必要があります。」(「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」4の問1)としています。感染症法の外出自粛規制が無くなるため、感染者や濃厚接触者について、一律に出勤停止にするといった取扱いにする場合は、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当するとして、少なくとも休業手当の支払が必要と考えます。
以下、厚生労働省HPからポイントを抜粋します。

新型コロナ患者や濃厚接触者に対して、感染症法に基づく外出自粛は求められなくなります。
外出を控えるかどうかは、個人の判断に委ねられます。その際、以下の情報を参考にして下さい。


Q1:新型コロナウイルス感染症は、他の人にうつすリスクはどれくらいありますか?
 新型コロナウイルス感染症では、鼻やのどからのウイルスの排出期間の長さに個人差がありますが、発症2日前から発症後7~10日間は感染性のウイルスを排出しているといわれています(参考1)。
 発症後3日間は、感染性のウイルスの平均的な排出量が非常に多く、5日間経過後は大きく減少することから、特に発症後5日間が他人に感染させるリスクが高いことに注意してください(参考2)。
 また、排出されるウイルス量は発熱やせきなどの症状が軽快するとともに減少しますが、症状軽快後も一定期間ウイルスを排出するといわれています。


Q2:新型コロナウイルス感染症にかかったら、どのくらいの期間、外出を控えればよいのでしょうか。
 令和5年5月8日以降、新型コロナ患者は、法律に基づく外出自粛は求められません。外出を控えるかどうかは、個人の判断に委ねられます。その際、以下の情報を参考にしてください。
 周囲の方や事業者におかれても、個人の主体的な判断が尊重されるよう、ご配慮をお願いします。
 各医療機関や高齢者施設等においては、以下の情報を参考に、新型コロナウイルスに罹患した従事者の就業制限を考慮してください。なお、高齢者施設等については、重症化リスクを有する高齢者が多く生活することも考慮してください。
 また、感染が大きく拡大している場合には、一時的により強いお願いを行うことがあります。

(1)外出を控えることが推奨される期間
  • 特に発症後5日間が他人に感染させるリスクが高いことから、発症日を0日目(※1)として5日間は外出を控えること(※2)、かつ、
  • 5日目に症状が続いていた場合は、熱が下がり、痰や喉の痛みなどの症状が軽快して24時間程度が経過するまでは、外出を控え様子を見ることが推奨されます。症状が重い場合は、医師に相談してください。

(※1)無症状の場合は検体採取日を0日目とします。
(※2)こうした期間にやむを得ず外出する場合でも、症状がないことを確認し、マスク着用等を徹底してください。
 また、学校保健安全法施行規則においても、「発症した後5日を経過し、かつ、症状が軽快した後1日を経過するまで」を新型コロナウイルス感染症による出席停止期間としています。

(2)周りの方への配慮

10日間が経過するまでは、ウイルス排出の可能性があることから、不織布マスクを着用したり、高齢者等ハイリスク者と接触は控える等、周りの方へうつさないよう配慮しましょう。発症後10日を過ぎても咳やくしゃみ等の症状が続いている場合には、マスクの着用など咳エチケットを心がけましょう。


Q3:5月8日以降の「濃厚接触者」の取扱はどのようになりますか?
令和5年5月8日以降は、5類感染症に移行することから、一般に保健所から新型コロナ患者の「濃厚接触者」として特定されることはありません。また、「濃厚接触者」として法律に基づく外出自粛は求められません。


Q4:家族が新型コロナウイルス感染症にかかったら、どうしたらよいですか?
ご家族、同居されている方が新型コロナウイルス感染症にかかったら、可能であれば部屋を分け、感染されたご家族のお世話はできるだけ限られた方で行うことなどに注意してください。
 その上で、外出する場合は、新型コロナにかかった方の発症日を0日として、特に5日間はご自身の体調に注意してください。7日目までは発症する可能性があります。こうした間は、手洗い等の手指衛生や換気等の基本的感染対策のほか、不織布マスクの着用や高齢者等ハイリスク者と接触を控える等の配慮をしましょう。もし症状が見られた場合には、Q2をご覧ください。

(厚生労働省HP「新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について」)

(2)新型コロナ感染の傷病手当金 令和5年5月8日以降の申請は医師の証明が必要

 新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金については、臨時的な取扱いとして、医師の証明の添付を不要としておりましたが、申請期間(療養のため休んだ期間)の初日が令和5年5月8日以降の傷病手当金の支給申請については、他の傷病による支給申請と同様に、傷病手当金支給申請書の療養担当者意見欄(申請書4ページ目)に医師の証明が必要となります。

(3)新型コロナウイルスに感染した場合の労災

 業務に起因して感染したものであると認められる場合には、労災保険給付の対象となります。新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類感染症に変更された後においても、この取扱いに変更はありません。
ただし、メリット制については、変更があります。新型コロナウイルス感染症の位置づけが5類感染症に変更されるまでに労働者が発病した場合の労災保険給付については、メリット制による労災保険料への影響はありませんが、5類感染症に変更された後に労働者が発病した場合の労災保険給付については、メリット制による労災保険料への影響がありえます。(新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)5の問1、問12)

(4)テレワークについて

 厚生労働省は、「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更等に伴うテレワークの取扱について」において、以下のようにテレワークの取扱についての考え方を示しました。

  • 雇用契約や就業規則において、労働者が任意にテレワークを実施できることが規定され、労働条件となっているのであれば、その規定に従う必要があり、原則として使用者が一方的にテレワークを廃止し、出社させることはできません。
  • テレワークは、労働者と使用者の双方にとって様々なメリットのある制度であることから、その取扱いについては労働者と使用者の間でよく話し合っていただくことが望ましいと考えられます。

2 障害者法定雇用率の引上げ【令和6年4月1日以降】

(1)障害者雇用率制度

① 法定雇用率

 「障害者の雇用の促進等に関する法律」は、事業主に対して、その雇用する労働者に占める身体障害者・知的障害者の割合が一定率(法定雇用率)以上になるように義務付けています(障害者雇用促進法43条1項)。この法定雇用率は、「労働者の総数に対する対象障害者である労働者の総数の割合」を基準として設定し、少なくとも5年ごとに、この割合の推移を考慮して政令で定めるとしています(障害者雇用促進法43条2項)。
現在、民間企業の法定雇用率は2.3%で、障害者を雇用しなければならない事業主の範囲は、従業員43.5人以上の事業主です(障害者雇用促進令9条)。これが、令和6年4月1日からは2.5%、従業員40.0人以上の事業主、令和8年7月1日からは2.7%、従業員37.5人以上の事業主が対象となります。

法定雇用率

(厚生労働省「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」)

② 各企業の雇用率と法定雇用者数

 企業が雇用率を達成しているかどうかを確認するのは実雇用率、自社で雇用すべき障害者数は何名になるのかは法定雇用障害者数の計算式で求めます。

【実雇用率】
実雇用率= 障害者である労働者数+障害者である短時間労働者数×0.5
労働者数+短時間労働者数×0.5
【法定雇用障害者数】
法定雇用障害者数= {常用雇用労働者の数+短時間労働者の数×0.5}×2.3%
※小数点以下切り捨て
③ 障害者数の算定方法

 算定対象となる障害者は、身体障害者、知的障害者および精神障害者です。
 また、障害特性で長時間の勤務が難しいこと等により、週所定労働時間20時間未満での雇用を希望する者が、いずれの障害種別でも一定数存在し、特に精神障害者で多いという状況があります。
 こうしたニーズを踏まえ、令和6年4月1日以降、週10時間以上20時間未満の精神障害者、重度身体障害者及び重度知的障害者について、雇用率上、0.5カウントとして算定できるようになります。
   カウント方法は次のとおりです。

障害者数の算定方法

(厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律の概要」)

 図の※印は、一定の要件を満たす場合に「0.5人」ではなく「1人」としてカウントする特例措置です。精神障害者の職場定着率は、週 20~30 時間勤務の場合が最も高く、その職場定着を進める観点から、精神障害者である短時間労働者を1カウントとする特例措置を継続することになりました。また、特例措置を継続するに当たり、一律に適用期間を区切ることはせず、新規雇入れ又は手帳取得から3年間という要件を外すことも検討されました。
以上から、令和5年4月1日以降、週所定労働時間が20時間以上30時間未満の精神障害者について、当分の間、雇用率上、雇入れからの期間等に関係なく、1カウントとして算定できるようになりました。

(2)障害者雇用納付金制度

 毎年度、常用雇用労働者数が101人以上の事業主で、法定雇用障害者数に達していない事業主は、不足する法定雇用障害者数1人につき月額50,000円を納付金として行政((独)高齢・障害・求職者雇用支援機構)に納付しなければなりません。なお、納付金を納めたからといって、雇用義務を免れるものではありません(障害者雇用促進法53条2項、54条、障害者雇用促進令17条)。

(3)障害者雇用調整金・報奨金

 法定雇用障害率を超えて身体障害者、知的障害者または精神障害者を雇い入れている事業主には、その超えている数1人につき、障害者雇用調整金として、月額27,000円が支給されます(障害者雇用促進法50条1項、2項、72条1項、障害者雇用促進令15条)。
 一方、常時雇用100人以下の事業主にあり、一定数を超えて身体障害者、知的障害者または精神障害者を雇い入れている場合には、1人につき、報奨金として月額21,000円が支給されます。

(4)特定短時間労働者を雇用する場合の特例給付金【令和6年4月1日からは廃止】

 令和2年4月1日より施行されている、短時間労働者のうち週所定労働時間が10時間以上20時間未満の「特定短時間労働者」を雇用する事業主に対する「特例給付金」の制度は、上述(1)③の雇用率制度の算定方法の変更により、令和6年4月1日より廃止されます。