働き方改革法が成立しましたが、会社ではどのような対応が必要でしょうか?

働き方改革法には、①罰則付きの残業規制、②同一労働同一賃金、③高度プロフェッショナル制度の3本柱があります。③が導入できるのは一部の企業に限られますが、①と②は多くの企業が対象です。①は36協定、②は非正規労働者の処遇について、改正法に照らし問題ないか、見直す必要があります。

【1】働き方改革法とは、施行日

 働き方改革法が、本年6月29日に成立し、7月6日に公布されました。同法は、改正労働基準法など8つの法律からなり、①罰則付きの残業規制、②同一労働同一賃金、③高度プロフェッショナル制度の3本柱があります。

【2】働き方改革法の概要と施行日

 上記の3本柱のうち、③高プロ制度は、職種が限定され(アナリスト等)、年収要件(1075万円の予想)もありますので、導入できるのは一部のケースに限られます。また、参議院の附帯決議にて、高プロを導入するすべての事業場に対して、労働基準監督署が立入調査を行うことがあげられていますので、当面導入が進まない可能性もあります。
 一方、①と②は多くの企業が対象です。②は非正規労働者の処遇について問題ないか、見直す必要があります。見直しポイントは前回のレポート等が参考になります。紙幅の関係もあり、②はより詳細が明らかになりましたら、改めてご紹介させていただきます。
①は自社の36協定が改正法に照らして問題ないか、見直す必要があります。施行日は、大企業では来年4月から、中小企業においても再来年4月からですので、いち早く対応が必要です。本稿ではこの点を中心にご説明します。

(労働政策審議会労働条件分科会平成30年7月10日資料を参考。下線部分は当初案より1年遅れの施行日で決定)

【3】罰則付きの残業規制

 これまで、時間外労働の限度は、強制力のない厚生労働大臣告示に定められていました。つまり、行政指導の基準であって、延長できる時間外労働の絶対的な基準とはなっていませんでした。これを法律に格上げし罰則による強制力をもたせることになりました。また、従来、労使の合意があれば、上限なく時間外労働が可能となっていた特別条項についても、上限が設定されることとなりました。そのため、36協定について、次のルールに沿った見直しが必要になります。

  1. 原則として、限度時間は月45時間、年間360時間
  2. 特別条項を締結する場合でも、年間上限720時間
  3. 特別条項を締結する場合でも、法定休日労働を含み、単月で100時間未満、2カ月ないし6カ月平均で月80時間以内
  4. 限度時間を超えることができるのは1年間で6回(6カ月まで)

※1年単位の変形労働時間制の場合、別途基準有り

(1)法定休日労働を含むかどうか

 見直しにあたり、注意点があります。①、②及び④については、従来の36協定同様、法定休日労働を含みません。一方、③については、法定休日労働を含みます。これは、労災保険における過重労働を原因とする脳・心臓疾患の認定基準と同様に、法定休日労働を含んだものです。従って、36協定に関しても、「法定休日抜き」及び「法定休日込み」の二重管理をする必要が出てきます。

(2)最大どれ位まで時間外労働させることができるのか

 特別条項が締結できる期間は、年間6か月までですので、最大限の時間外労働時間は以下のように計算されます。

・法律による上限(原則)      45時間×6カ月=270
・特別条項締結期間の上限      720-270=450
・特別条項締結期間の上限(月平均) 450÷6=75

 つまり、特別条項を締結すれば、6カ月間は月平均75時間の協定を結ぶことができると言えます。例えば、4月~6月は80時間、7月~9月は70時間、10月~3月は45時間を月の上限として協定するといった具合です。
 しかし、(1)の法定休日労働についてのチェックが必要になります。上の例で行くと、4月~9月までの間、法定休日労働が発生しなければ良いですが、法定休日労働が発生する場合、これも計算に入れる必要があります。
 以上のように、「法定休日抜き」及び「法定休日込み」の二重管理は、非常に煩雑です。これを避ける一つの方法は、法定休日労働をさせないことです。法定休日は、1週1休(変形制の場合4週4休)ですから、原則の週休制の場合、1週1休を確保することです。どうしても土日両方の出勤が必要な場合は、同一週内で振替休日を確保します。
もう一つは、できるだけ残業を減らすことです。例えば、1日2時間程度の時間外労働であれば、月45時間の上限に収まりやすくなりますので、このような目標を掲げ、残業削減対策、業務効率化を図ると良いと考えます。

【4】その他の留意点

 改正労働基準法第36条第7項では、36協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項、当該労働時間の延長に係る割増賃金率などについて、指針を定めるとしています。36協定の様式も新たに定められます。
 また、参議院の附帯決議では、36協定を締結する際の過半数代表者について、「使用者の意向による選出」は手続違反に当たることなどを省令に規定し、監督指導を徹底することが定められています。さらには、専門業務型裁量労働制の協定締結者である過半数代表者等、企画業務型の労使委員会についても、同様の対策を検討するとしています。過半数代表者等の選出については、必ず民主的な手続きで選出し、その証拠を残すようにしてください。
7月10日には、労働政策審議会にて省令や指針の検討が始まっています。詳細が明らかになりましたら、随時ご紹介させていただきます。

採用トピックス~求職者は求人情報のどこを見ているのか

 ここの所、業種等を問わず、採用難のお話をよく聞きます。そこで、会社と求職者の最初の接点である求人情報について取り上げます。
 ハローワークの求人情報の閲覧行動について、アイトラッキングを用いた実験結果があります(独立行政法人労働政策研究・研修機構「中小企業における人材の採用と定着―人が集まる求人、生きいきとした職場/アイトラッキング、HRMチェックリスト他から―」)。個人が求人情報のどこを何秒間見ているかといった客観的なデータをまとめたものです。
 この結果によると、Web求人情報の一覧ページにおいて、最も注視されているのは、職種ということが分かります。インディードなどの民間の就職サイトでも、職種名は最初に出てくる項目であり、ここをいかに書くかが求人情報の一つのポイントになります。職種名については、一目で仕事の内容+αが分かるようにし、インパクトがあり、目を引くようなコピー、具体的であるとベターです。例えば、「営業職」だけでなく「コンサルティング営業職(生命保険・損害保険)」といった書き方です。自社の職種について、どうすれば応募者の興味を引けるのか、またその職種に合った人に応募してもらえるのか、といった観点から検討すると良いでしょう。