本年10月改正後の育児休業中の社会保険料免除について、次のケースの月給と賞与の社会保険料が免除されるか教えて下さい。当社の賞与は12月に支給されます。
- 育児休業 11月16日~12月15日(ちょうど1ヶ月)
- 育児休業 11月29日~12月29日(1ヶ月と1日)
- 育児休業 11月30日~12月31日(1ヶ月と2日)
- 育児休業 12月 1日~12月31日(ちょうど1ヶ月)
- 出生時育児休業 12月 1日~9日(9日間)、19日~23日(5日間)(計14日間)
- 出生時育児休業 12月20日~1月6日(18日間)、16日~25日(10日間)(計4週間)
次ページの図表1のようになります。
Ⅰ.育児休業の社会保険料免除
1.月給の保険料免除
従前の育児休業者の健康保険・厚生年金保険の保険料免除は、月の末日に育休を取得しないと社会保険料免除となりませんでした。従って、月の半ばに数日間の育児休業を取得する場合は免除の対象外でした。
改正後は、➊に加えて❷のケースが追加され、免除要件が緩和されることになりました。
➊その月の末日が育児休業期間中である場合
改正前からの免除要件で、この要件に変更はありません。
育児休業等を開始した日(以下「育児休業等開始日」という。)の属する月と当該育児休業等が終了する日(以下「育児休業等終了日」という。)の翌日が属する月が異なる場合
育児休業等開始日の属する月を保険料の免除期間の始期とし、育児休業等終了日の翌日の属する月の前月を免除期間の終期とすること。
(「健康保険、船員保険及び厚生年金保険の育児休業等期間中の保険料免除等の取扱いについて(通知)」(保保発0809第2号、年管管発0809第1号令和4.8.9。以下「通知」という)
❷その月中に2週間以上育休を取得した場合
「開始日」と「終了日の翌日」が同一月内で、期間が14日以上あることが要件です。
育児休業等開始日の属する月と育児休業等終了日の翌日が属する月とが同一の場合
当該月における育児休業等の日数が14 日以上(ただし、当該被保険者が育介法第9条の2第1項にいう出生時育児休業を取得する場合には、同法第9条の5第4項の規定に基づく事業主が当該被保険者を就業させる日数を除く。)である場合、当該月の保険料を免除すること。
(前掲・通知)
2.賞与の保険料免除
これまでは賞与月の月末時点で育児休業を取得していると免除されていましたが、改正後は「1ヶ月超」の育児休業取得者に限り、賞与保険料の免除対象となります。育児休業期間は「1ヶ月以上」ではなく、「1ヶ月超」えていなければなりません。
また、1ヶ月を超える育児休業中の月末が含まれる月に支給される賞与について、保険料が免除されることになります。
賞与の免除要件を整理すると次のようになります。
①1ヶ月を超えること
+ ②育児休業期間中の月末が含まれる月に支給された賞与に限る
❸1月を超える育児休業等を取得している場合(賞与)
標準賞与額に係る保険料の免除基準について
1月を超える育児休業等を取得している場合に限り、免除の対象とすること。なお、免除期間は、1➊に示すとおりであること。
(前掲・通知)
3.質問のケース
(1)月給について
①のケースで、12月は14日以上休業していますが、14日の要件は開始日と終了予定日の翌日が同一月に属する育児休業等についてのみ適用されるため、12月は対象になりません。
問7.前月以前から取得している育児休業等について、最終月の月末まで育児休業等を取得しておらず、最終月に14 日以上の育児休業等期間がある場合、最終月の保険料は免除対象になるのか。
(答)
- 今般設ける14 日の要件による免除の仕組みは、開始日と終了予定日の翌日が同一月に属する育児休業等についてのみ適用し、月末を含む育児休業等(開始日と終了予定日の翌日が異なる月に属する育児休業等)の日数は、14 日の要件の適用において考慮しない。したがって、「前月以前から取得している育児休業等」の最終月の保険料は、その月の月末日が育児休業等期間中であるか、その月の月中に当該育児休業等とは連続しない別途の育児休業等(14日以上)を取得している場合にのみ免除となる。
(「育児休業等中の保険料の免除要件の見直しに関するQ&A」厚生労働省令和3.3.31。以下Q&Aという)
同一月内に複数の育児休業等がある場合は、合算して14日以上の判断をします(ケース⑤)。ただし、前月以前から取得している育児休業等の日数は合算されません(ケース⑥の1月)。
問8.「育児休業等日数」に基づく14 日要件の判定はどのように行うのか。
(答)
- ある育児休業等について、その開始日から終了予定日までの日数(当該育児休業等が出生時育児休業である場合、開始日から終了予定日までの日数から育介法第9条の5の規定に基づき労使間で合意した上で就業した日数(以下「就業日数」という。)を除いた日数)を当該育児休業等に係る「育児休業等日数」とする。
- ある月の月内に開始日と終了予定日の翌日がともに属する育児休業等が複数ある場合、当該月の「合計育児休業等日数」(そのすべての育児休業等の「育児休業等日数」を合算して算定)が14 日以上であれば(休業は連続していなくても可)、当該月の保険料を免除する。
(Q&A)
問9.同月内に取得した複数の育児休業等に係る育児休業等日数の合算について、前月以前から取得している育児休業等の日数についても合算の対象となるのか。
(答)
- 14日要件の判定に用いる「育児休業等日数」の合算は、開始日と終了予定日の翌日が同一月に属する育児休業等についてのみ行い、月末を含む育児休業等(開始日と終了予定日の翌日が異なる月に属する育児休業等)の日数は、14 日要件の適用において考慮しない。したがって、「前月以前から取得している育児休業等」の日数については合算の対象としない。
(Q&A)
また、休日については、開始日から終了予定日までの間に土日や年休が入っていても、14日の算定から差し引かれません。就業日数は除きます。
問10.育児休業等日数の算定にあたり、休日は含めるのか。
(答)
- 育児休業等日数は、ある育児休業等の開始日から終了予定日までの日数(当該育児休業等が出生時育児休業である場合、開始日から終了予定日までの日数から就業日数を除いた日数)をいい、その間に土日等の休日、有給休暇など労務に服さない日が含まれていても、育児休業等日数の算定に当たり差し引くことはしない(育児休業等日数に含まれる)。
(Q&A)
(2)賞与について
「1ヶ月」の要件については、暦に従って計算をします。月の途中から起算するときは、翌月の起算日に応答する日の前日までを1ヶ月と考えます。
賞与については1ヶ月を超えている必要があるため、出生時育児休業のみを最大4週間とっても賞与の免除は対象外ということになります(ケース⑥)。ただし、連続して複数回の育児休業等を取得している場合は、1つの育児休業等とみなして合算して育児休業等期間の算定に含めるとされています。例えば、出生時育児休業と育児休業を連続取得して1ヶ月を超える場合は、免除対象になると考えられます。
また、育児休業期間に月末が含まれる月に支給された賞与が免除対象となります(ケース③)。
問14.連続して1月超の育児休業等の取得者に限り、賞与保険料の免除対象とするとしているが、1月は何日とするのか。免除対象となるのはどの月に支給された賞与か。
(答)
- 賞与保険料の免除対象外とする1月以下の育児休業等期間の算定については、暦によって計算する(例えば、11 月16 日から12 月15 日まで育児休業等の場合、育児休業等期間はちょうど1月であるため、賞与保険料の免除の対象外となる。)。
(参考)民法(明治29 年法律第89 号)第143 条(暦による期間の計算)
- 週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。
- 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。
- 1月超の育児休業等については、従来通り月末時点に育児休業等を取得しているかどうかで保険料免除を判断するため、育児休業等期間に月末が含まれる月に支給された賞与に係る保険料を免除することとなる。
(Q&A)
休日については、次のように示されています。上記の14日間の算定と異なり、暦日で判断されますので、例えば、育児休業期間の終了日が日曜日であっても1ヶ月の算定に含まれると考えられます。
問15.賞与保険料にかかる育児休業等期間の算定にあたり、休日は含めるのか。
(答)
- 賞与保険料の免除の基準となる「1月超」については、暦日で判定することとしており、土日等の休日であっても育児休業等期間の算定に含まれる。
(Q&A)
3.手続について
免除の手続は、原則として育児休業期間中に行う必要があります。ただし、令和4年10月1日以降に取得する育児休業等については、育児休業等期間終了後であっても、終了日から1ヶ月以内であれば、理由書等の添付がなくとも受付が可能とされています。
なお、育児休業等取得者申出書の様式が新しくなり、「育児休業等取得日数」、「就業予定日数」や分割取得する場合の欄などが追加されています。これらの情報が手続に必要になります。
問22.1つの育児休業等の取得届出により、複数回の育児休業等の取得届出をまとめることは可能か。また、合算の対象となるのは1つの育児休業等の取得届出にかかるもののみか、それとも複数回にわたって育児休業等の取得届出が行われた場合も合算の対象となるのか。
(答)
- 育児休業等の取得届出の提出に当たっては、複数回の育児休業等の取得届出をまとめて提出するのではなく、育児休業等を取得する都度提出する。
- ただし、育児休業等開始年月日と育児休業等終了年月日の翌日が同じ月に属する複数の育児休業等を取得した場合で、それぞれの育児休業等取得日数を通算し、14 日以上となる場合には、複数回の育児休業等の取得届出をまとめて提出することを可能とする。この場合、それぞれの育児休業等開始年月日、育児休業等終了年月日、育児休業等取得日数及び就業日数を取得届出に記載する。
- 取得届出には、育児休業等4期間分の記載欄を設け、分割取得毎の記載を可能とすること。
- 就業日数がある場合、就業日数を除いた育児休業等取得日数を取得届出に記載。
- 連続する育児休業等(ある育児休業等が他の育児休業等と連続している場合(例えば、11 月14 日に終了する育児休業等と11 月15 日に開始する育児休業等)、又は二以上の育児休業等であって1の育児休業等の終了日とその次の育児休業等の開始日の間に労務に服した日がない場合(例えば、11 月12 日に終了する育児休業等の次に11 月15 日に開始する育児休業等を取得したが、その間の13 日及び14 日は休日のため労務に服さない場合)をいう。)については、1の育児休業等として届出(複数のうち最初の育児休業等の開始年月日と最後の育児休業等の終了年月日を用いる)。
(Q&A)
Ⅲ.パート社会保険の適用拡大(厚生年金保険の被保険者数101人以上の企業)
本年10月から、企業規模101人以上の会社は、パートの社会保険の適用が拡大されます。
日本年金機構は、企業規模101人以上の要件を満たす企業に対し、事前に「特定適用事業所該当事前のお知らせ」を送付します。また、10月頃に「特定適用事業所該当通知書」が送付される予定です。
従業員に該当対象者がいるかどうかは、年金事務所は把握していませんので、改正により、新たに被保険者資格を取得する短時間労働者がいる場合は、会社が「被保険者資格取得届」を提出する必要があります。
改正後の要件は、4分の3基準を満たさない短時間労働者のうち、次の1から4までの4つの要件を満たす場合に、新たに厚生年金保険・健康保険の被保険者となります。
- 週間の所定労働時間が20時間以上であること。
- 月額賃金が8.8万円以上であること。
- 学生でないこと。
- 特定適用事業所(厚生年金保険の被保険者数101人以上)に使用されていること。
厚生労働省からQ&Aも出されていますので、こちらもご参考ください。
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.files/QA0410.pdf
Ⅱ.最低賃金引き上げ
1.最低賃金の引上げ
令和4年10月以降、全国の最低賃金が改定されました。改定後の全国加重平均額は961円で、昨年度の930円から31円の引き上げとなりました。最低賃金は、全国平均が1,000円になるまで引き上げられる予定です。
引上げに伴い、新入社員など若年層の月給やパートタイマーの時給などのチェックが必要です。また、固定残業代を支給している場合、固定残業代は最低賃金の計算から除かれますので、除いた金額が最低賃金を下回っていないか確認して下さい。
2.最低賃金の計算方法
最低賃金の計算方法は次の通りです。
【月給の場合の計算式】
月給÷1ヶ月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
※1ヶ月平均所定労働時間=年間所定労働日数×1日の所定労働時間÷12
また、最低賃金の対象となる賃金は毎月支払われる基本的な賃金です。具体的には、実際に支払われる賃金から以下の手当等を除外したものが最低賃金の対象となります。
【最低賃金の対象とならないもの】
- 結婚手当など(臨時に支払われる賃金)
- 賞与など(1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金)
- 時間外割増手当、休日割増手当、深夜割増手当、固定残業代など(所定外給与)
- 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
※住宅手当は最低賃金の計算に含めます。この点、割増賃金の考え方とは異なります。
3.地域別最低賃金額
令和4年度の全国の地域別最低賃金額は以下の通りです。発効年月日は殆どが10月1日ですが、地域によって若干異なりますので、詳細は厚生労働省のHPをご確認下さい。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/
Ⅳ.従業員の雇用保険料率引上げ
雇用保険料率が引き上げられ、本年10月から労働者負担分の改正料率が施行されます。原則として10月分給与から雇用保険料の控除を変更する必要ありますので、ご注意下さい。
なお、事業主負担分はすでに本年4月に改正料率が施行されています。
(厚生労働省「令和4年度雇用保険料率のご案内」)