育児介護休業法の改正が行われましたが、本年4月に施行される制度とその対応について教えて下さい。

本年4月に施行される制度としては、次の3点があります。

  1. 妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け
  2. 育児休業を取得しやすい雇用環境整備
  3. 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

具体的な対応については解説をご確認下さい。

1.令和4年4月1日施行の制度について

 改正育児介護休業法は、一部が令和4年4月1日に施行されます。以下、令和4年4月1日付改正内容と実務対応について、「『育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の施行について』の一部改正について」(職発0802第1号・雇児発0802第3号・平成28年8月2日。改正令和3年11月4日雇均発1104第2号。以下「施行通達」という)、「令和3年改正育児・介護休業法に関する Q&A」(令和3年11月30日時点。以下「Q&A」という)等を参考に検討します。

2.個別周知・意向確認について

 本人又は配偶者の妊娠・出産の申出をした労働者に対し、個別に育児休業制度等について周知し、取得の働きかけをすることを事業主に義務付けることになりました。
改正育児介護休業法第21条第1項は、この点につき次のように定めています。

(妊娠又は出産等についての申出があった場合における措置等)
第二十一条 事業主は、労働者が当該事業主に対し、当該労働者又はその配偶者が妊娠し、又は出産したことその他これに準ずるものとして厚生労働省令で定める事実を申し出たときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者に対して、育児休業に関する制度その他の厚生労働省令で定める事項を知らせるとともに、育児休業申出に係る当該労働者の意向を確認するための面談その他の厚生労働省令で定める措置を講じなければならない。※以下、下線は筆者が加筆

(1)妊娠・出産の「申し出」とは

 この制度の「申し出」とはどのような範囲まで含まれるのでしょうか。例えば、直属の上司に雑談の中で妻が妊娠したと伝えた時や、生まれた子供を扶養に入れるために手続事務担当者に伝えた時も含まれるのでしょうか。Q&Aでは、次のように述べています。

Q2-7:妊娠・出産等の申出は口頭でよいですか。

A2-7:法令では、申出方法を書面等に限定していないため、事業主において特段の定めがない場合は口頭でも可能です。(※)
事業主が申出方法を指定する場合は、申出方法をあらかじめ明らかにしてください。
仮に、申出方法を指定する場合、その方法については、申出を行う労働者にとって過重な負担を求めることにならないよう配慮しつつ、適切に定めることが求められますので、例えば、労働者が当該措置の適用を受けることを抑制するような手続を定めることは、認められません。
また、仮に、その場合に指定された方法によらない申出があった場合でも、必要な内容が伝わるものである限り、措置を実施する必要があります。
(※) 口頭による申出の場合でも措置を実施する必要がありますので、円滑な措置の実施のために、例えば、あらかじめ社内で申出先等を決めておき、その周知を行っておくことが望ましいです。

Q2-9:個別周知と意向確認は、人事部から行わなければならないのですか。所属長や直属の上司から行わせることとしてもよいですか。

A2-9:現行の育児休業に関する規定と同じく、「事業主」として行う手続きは、事業主又はその委任を受けてその権限を行使する者と労働者との間で行っていただくものです。

 以上によると、申出の具体的な方法は法律に定められていませんので、各企業で特段のルールを定めていない場合は、先述のようなケースも周知義務の対象になる可能性があります。しかし、実務上、直属上司との雑談時や手続事務担当者に周知・面談義務を徹底するのは困難なケースもあると考えます。従って、相談窓口などを定めておき、その窓口に申し出があった場合に制度周知や面談をするといったルールを決め、従業員に周知しておくことが望まれます。
 また、法第21条は事業主に課せられた義務です。Q&Aでは、事業主又は「事業主からの委任を受けてその権限を行使する者」との間で行うこととされています。そのような権限を持たない現場の下級管理職や手続事務担当者を申し出窓口とし、当該義務を負わせるのは適切でない可能性があります。

(2)個別周知と意向確認の措置の内容・方法

施行通達及びQ&Aにて次のように定められています。

Q2-1:個別の周知と意向確認の措置として、事業主は、どのような内容をどう実施すればよいですか。

A2-1:労働者から、本人又は配偶者が妊娠又は出産した旨等の申出があった場合に、当該労働者に対して、育児休業制度等(令和4年 10 月1日からは、出生時育児休業も含みます。)について周知するとともに、制度の取得意向を確認するための措置を実施する必要があります。※取得を控えさせるような形での個別周知と意向確認は認められません。
周知事項は、

  1. 育児休業・出生時育児休業に関する制度
  2. 育児休業・出生時育児休業の申し出先
  3. 育児休業給付に関すること
  4. 労働者が育児休業・出生時育児休業期間について負担すべき社会保険料の取り扱い

であり、これらの個別周知及び意向確認の措置は、

  1. 面談
  2. 書面交付(郵送によることも可能)
  3. FAX
  4. 電子メール等

のいずれかによって行う必要があります(③・④は労働者が希望した場合のみ)。
なお、個別周知・意向確認の措置に活用できる資料素材を、厚生労働省ホームページの以下のページに掲載しております。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/000103533.html
「個別周知・意向確認書記載例」をご参照ください。

 出生時育児休業については、令和4年 10 月以降に労働者から妊娠・出産等の申出が行われた場合に周知しなければならないものです。ただし、妊娠・出産等の申出が令和4年 10月より前に行われた場合でも、子の出生が令和4年10月以降に見込まれるような場合には、出生時育児休業制度も含めて周知することが望ましいとされています。
 また、書面交付の方法は、直接手交することのほか、郵送も可能とされています。面談による方法については、直接対面で行うほか、オンライン面接も可能です。ただし、対面で行う場合と同程度の質が確保されることが必要で、音声のみの通話などは面談による方法に含まれません。
 面談の場合、記録が残らないため、必要に応じて記録を作成することが望ましいとされています(Q&AのA2-11)。

(3)個別周知・意向確認を行わなければならない対象労働者

 個別周知・意向確認の措置は、令和4年4月1日以降に妊娠・出産等の申出があった労働者に行えばよいとされています。子どもが産まれるすべての労働者に対してではなく、「本人又は配偶者が妊娠又は出産した旨等の申出があった場合」にこれらの措置を実施する必要があります(Q&AA2-2)。また、育休を取得するつもりはないと言っていた労働者にも、当該措置を講ずる必要があります(Q&AA2-3)。

Q2-3:妊娠・出産報告の時に、「育休を取得するつもりはない」「制度周知は不要」と言っていた労働者にも個別周知及び意向確認を行わなければならないのですか。

A2-3:法第 21 条は事業主に対して、育児休業に関する制度等の周知及び意向確認の措置を講ずることを義務づけているものですので、労働者が周知や意向確認の措置が不要である旨の意思表示をしていた場合であっても、事業主は、当該労働者に対し措置を講ずることが求められます。
周知の方法や意向確認の措置は、FAX や電子メール等を労働者が希望しない限り面談又は書面の交付(労働者が希望した場合には FAX、電子メール等による方法でも可能)で行うこととなります。(仮に当該労働者が周知及び意向確認を不要とする旨の意思表示をしている場合には、面談を行わず書面の交付(郵送によることも可能)で行うことも対応の一例としてが考えられます。)

3.育児休業を取得しやすい雇用環境整備の措置

 育児休業申出が円滑に行われるようにするため、次のいずれかの措置を講ずることを、事業主に義務づけることになりました。複数の措置を講じることが望ましいとされています。

  1. 育児休業・出生時育児休業に関する研修の実施
  2. 育児休業・出生時育児休業に関する相談体制の整備等(相談窓口設置)
  3. 自社の労働者の育児休業・出生時育児休業取得事例の収集・提供
  4. 自社の労働者へ育児休業・出生時育児休業制度と育児休業取得促進に関する方針の周知

 「研修の実施」については、その雇用する全ての労働者に対して研修を実施することが望ましいものであるが、少なくとも管理職については研修を受けたことのある状態にすべきものとされています。
また、「相談体制の整備」とは相談体制の窓口の設置や相談対応者を置き、これを周知することです。このことは窓口を形式的に設けるだけでは足らず、実質的な対応が可能な窓口が設けられていることをいうものであり、労働者に対する窓口の周知等により、労働者が利用しやすい体制を整備しておくことが必要です。
実務的には、上記2(1)の申し出窓口をここで兼ねることも考えられます。

4.有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

 現行法では、育児休業・介護休業ともに、有期雇用労働者の取得要件として「引き続き雇用された期間が1年以上」と定められていますが、今回の改正で、この点は要件としては廃止されます。これに伴い、無期雇用労働者と同じく、引き続き雇用された期間が1年未満の場合は、労使協定において、対象から除外可能という形になります。
なお、今回の改正後も、有期雇用労働者について以下の要件は残ります。

  • 育児休業:子が1歳6か月に達する日までに、労働契約が満了することが明らかでないこと
  • 介護休業:介護休業開始予定日から 93 日経過する日から6か月を経過する日までに、労働契約が満了することが明らかでないこと

(1)改正法施行前後の労使協定の取扱いについて

Q4-3:今回の改正で、引き続き雇用された期間が1年未満の有期雇用労働者について、法律上対象外から労使協定除外の対象に変更になりますが、既に締結している労使協定において、引き続き雇用された期間が1年未満の労働者について有期雇用・無期雇用を問わない形で除外していた場合、労使協定を締結し直さなくとも、改正法の施行後は有期雇用・無期雇用問わず当該労使協定により除外されると解して良いですか。

A4-3:改正前の法第5条第1項ただし書では、引き続き雇用されていた期間が1年未満の有期雇用労働者には育児休業申出の権利が付与されていなかったところ、今回の改正法により、引き続き雇用されていた期間が1年未満の有期雇用労働者についても、育児休業申出の権利が付与されました。
このため、改正法の施行後において、有期雇用労働者も含めて、引き続き雇用されていた期間が1年未満の労働者について、法第6条第 1 項ただし書に基づき当該申出を拒む場合は、そのことについて、改めて労使協定を締結していただく必要があります。

 厚生労働省が出している労使協定例では、特に有期無期の書き分けはなく、労使協定の内容はこれまでと変更ありません。それでも締結し直しが必要か東京労働局に確認した所、文言に変更が無い内容で労使協定の再締結が必要ということです。

5.育児休業等に関する定めの周知等の措置(努力義務)

 労働者が育児休業又は介護休業(以下「育児休業等」という。)をするか否かは労働者の選択に委ねられていますが、その選択を適切に行うことができるようにし、かつ、後に紛争が起こることを未然に防止するため、次の事項をあらかじめ定め、周知することが事業主の努力義務とされています。

  • 育児休業等の期間中の待遇
  • 育児休業等の後の賃金
  • 配置等の労働条件
  • 厚生労働省令で定める必要な事項

6.規定例

 以下、規定例を載せておきますので、ご参考ください。厚生労働省は令和4年10月1日施行の改正点についても、規定例を示しています。この点についてもあらかじめ規定を修正しておき、改正法施行日が到来したら規定を適用するように定めておくのも一つの方法です。

《法に基づき一定範囲の有期契約労働者と労使協定の締結により除外可能な者を除外する例》
(育児休業の対象者)

第2条

  1. 育児のために休業することを希望する従業員(日雇従業員を除く)であって、1歳に満たない子と同居し、養育する者は、この規則に定めるところにより育児休業をすることができる。ただし、有期契約従業員にあっては、申出時点において、子が1歳6か月(本条第6項又は第7項の申出にあっては2歳)に達する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでない者に限り育児休業をすることができる。
  2. 本条第1項、第3項から第7項にかかわらず、労使協定により除外された次の従業員からの休業の申出は拒むことができる。
    1. 入社1年未満の従業員
    2. 申出の日から1年(本条第4項から第7項の申出にあっては6か月)以内に雇用関係が終了することが明らかな従業員
    3. 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

《法に基づき一定範囲の有期契約労働者と労使協定の締結により除外可能な者を除外する例》
(介護休業の対象者)

第10条

  1. 要介護状態にある家族を介護する従業員(日雇従業員を除く)は、この規則に定めるところにより介護休業をすることができる。ただし、有期契約従業員にあっては、申出時点において、介護休業を開始しようとする日(以下、「介護休業開始予定日」という。)から93日経過日から6か月を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでない者に限り介護休業をすることができる。
  2. 本条第 1 項にかかわらず、労使協定により除外された次の従業員からの休業の申出は拒むことができる。
    1. 入社 1 年未満の従業員
    2. 申出の日から 93 日以内に雇用関係が終了することが明らかな従業員
    3. 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

 会社は、従業員から本人又は配偶者が妊娠・出産等したこと又は本人が対象家族を介護していることの申出があった場合は、当該従業員に対して、円滑な休業取得及び職場復帰を支援するために、以下(1)(2)の措置を実施する。また、育児休業及び出生時育児休業の申出が円滑に行われるようにするため、(3)の措置を実施する。

  1. 当該従業員に個別に育児休業に関する制度等(育児休業、出生時育児休業、パパ・ママ育休プラス、その他の両立支援制度、育児休業等の申出先、育児・介護休業給付に関すること、休業期間中の社会保険料の取扱い、育児・介護休業中及び休業後の待遇や労働条件など)の周知及び制度利用の意向確認を実施する。
  2. 当該従業員ごとに育休復帰支援プラン又は介護支援プランを作成し、同プランに基づく措置を実施する。なお、同プランに基づく措置は、業務の整理・引継ぎに係る支援、育児休業中又は介護休業中の職場に関する情報及び資料の提供など、育児休業又は介護休業等を取得する従業員との面談により把握したニーズに合わせて定め、これを実施する。
  3. 従業員に対して育児休業(出生時育児休業含む)に係る研修を実施する。

(厚生労働省HP「育児・介護休業等に関する規則の規定例」)

(厚生労働省HP「育児・介護休業等に関する規則の規定例」)