Ⅰ 求職活動等におけるセクシュアルハラスメント対策

就活ハラスメントについて法改正がされますが、具体的にはどのような対策が求められるのでしょうか。また施行時期についても教えて下さい。

事業主は、次のような対応が必要です。

  • 就業規則等に就活セクハラを行ってはならない旨の方針を明確にし、これに反する場合は懲戒規定の適用の対象となる旨を明確化し、周知啓発
  • 求職活動等に関するルールをあらかじめ明確化し、これを労働者に周知・啓発
  • 求職者等に対しては、その規則を踏まえ、面談等に関する留意事項をホームページやパンフレット等の広報手段を用いて周知
  • 相談窓口をあらかじめ定め、求職者等にパンフレット、ホームページ等によって周知
求職活動等におけるセクシュアルハラスメント対策

1.労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律(令和7.6.11法律63)の成立と施行予定

 少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少やグローバル規模での競争が激化する中で、多様な労働者がその能力を十分に発揮して活躍できる就業環境を整備することが重要な課題となっています。
 そのような中、今年の通常国会で「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律」が6月4日に成立し、6月11日に公布されました。
この法律は、多様な労働者が活躍できる就業環境の整備を図るため、ハラスメント対策の強化や女性活躍の推進、治療と仕事の両立支援の推進等の措置を講ずることが主な内容です。詳細は指針等に定められることになっています。
今月17日の労働政策審議会(雇用環境・均等分科会)にて、指針の素案(以下「指針素案」という)が示されましたので、本稿では「求職活動等におけるセクシュアルハラスメント」(以下「就活セクハラ」とも言う)について一部確認したいと思います。
なお、施行日については、同労働政策審議会にて、「求職活動等におけるセクシュアルハラスメント」や「カスタマーハラスメント」については「令和8年10月1日」とすることが検討されています。

2.就活生へのセクハラ対策の義務化(男女雇用機会均等法)

 上記法改正により、求職者等(就職活動中の学生やインターンシップ生等)に対するセクハラ防止対策を事業主の義務とする男女雇用機会均等法の改正が行われます。同法では、従業員が求職者等と接する面談時などのルールを定めておくこと、相談窓口を設置することなどが想定されています。以下、男女雇用機会均等法の改正内容について、指針素案を参考に主なポイントを確認します。

【男女雇用機会均等法の改正内容】

(求職活動等における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等)

第十三条 事業主は、求職者その他これに類する者として厚生労働省令で定めるもの(以下この項及び次項並びに次条において「求職者等」という。)によるその求職活動その他求職者等の職業の選択に資する活動(以下この項及び同条第一項において「求職活動等」という。)において行われる当該事業主が雇用する労働者による性的な言動により当該求職者等の求職活動等が阻害されることのないよう、当該求職者等からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2 事業主は、労働者が事業主による求職者等からの前項の相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。(略)

(求職活動等における性的な言動に起因する問題に関する国、事業主及び労働者の責務)

第十四条 国は、求職者等の求職活動等を阻害する前条第一項に規定する言動を行つてはならないことその他当該言動に起因する問題(以下この条において「求職活動等における性的言動問題」という。)に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならない。
2 事業主は、求職活動等における性的言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が求職者等に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならない。(略)

(1)求職活動等におけるセクシュアルハラスメントの内容

 求職活動等におけるセクシュアルハラスメントとは、事業主が雇用する労働者による性的な言動により求職者等の求職活動等が阻害されるものをいいます。このセクハラには、性的指向にかかわらず、またジェンダーアイデンティティに関するものも対象となります。
 「求職活動等」とは、求職者が行う求職活動や求職者に類するものが行う職業の選択に資する活動を指し、指針素案では、企業が行う採用面接・就職説明会への参加、OB・OG訪問、インターンシップ、教育実習・看護実習等の実習の受講などが例示されています。なお、SNS 等のオンラインを介したものやオンライン上で行われるものも含まれます。また、事業主が雇用する労働者が通常就業している場所で行われるものに限らないとされています。
 「労働者」については、正社員だけでなく、パートタイマー、契約社員等の非正規雇用労働者を含む事業主が雇用する労働者の全てをいいます。派遣労働者については、派遣先も事業主とみなして、就活ハラスメント防止措置等を講ずるよう定められます。
 「性的な言動」は、これまでのセクシュアルハラスメント(以下「セクハラ」ともいう)と同様の内容です。性的な内容の発言及び性的な行動を指し、この「性的な内容の発言」には、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布すること等が、「性的な行動」には、性的な関係を強要すること、必要なく身体に触ること、わいせつな図画を配布すること等が、それぞれ含まれるとされています。
「求職活動等におけるセクシュアルハラスメント」とは、求職活動等において行われる求職者等の意に反する性的な言動により求職者等の求職活動等が阻害され、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該求職者等が求職活動等を行う上で看過できない程度の支障が生じることであって、その状況は多様ですが、典型的な例として、次のようなものが指針素案であげられています。

  • 個室で実施する一対一の説明会において、労働者が求職者等の腰、胸等に触ったため、当該求職者等が苦痛に感じてその求職活動等の意欲が低下していること。
  • 企業が実施するインターンシップにおいて、労働者が求職者等に対して性的な冗談やからかいを意図的かつ継続的に行ったため、当該求職者等が苦痛に感じてインターンシップ中の活動が手につかないこと。
  • 面接中、面接官を務める労働者から性的な事実に関する質問を受け、求職者が苦痛に感じてその求職活動等の意欲が低下していること。
  • 求職者等が労働者への訪問を行った際、当該労働者に性的な関係を求められ、当該求職者等が苦痛に感じてその求職活動等の意欲が低下していること。
  • インターンシップ中に労働者が求職者等を執拗に私的な食事に誘い、当該求職者等が苦痛に感じてその求職活動等の意欲が低下していること。

(2)事業主の責務

 法第 14 条第2項の規定により、事業主は、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントを行ってはならないこと、その他求職活動等におけるセクシュアルハラスメントに起因する問題(以下「求職活動等におけるセクシュアルハラスメント問題」という。)に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が求職者等に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる同条第1項の広報活動、啓発活動その他の措置に協力するように努めなければならないとされます。なお、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントに起因する問題としては、例えば、求職者等の健康状態の悪化や、求職活動等の停止などにつながり得ることが考えられ、また、事業主が社会的信用を失うことなどの経営的な損失等が考えられるとしています。

(3)労働者の責務

 法第 14 条第4項の規定により、労働者は、求職活動等におけるセクシュアルハラスメント問題に対する関心と理解を深め、求職者等に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる4の措置に協力するように努めなければならないとされます。

(4) 事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関し雇用管理上講ずべき措置の内容

 事業主は、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントを防止するため、雇用管理上次の措置を講じなければならないとしています。
 事業主は、就業規則等に就活セクハラを行ってはならない旨の方針を明確にし、これに反する場合は懲戒規定の適用の対象となる旨を明確化にし、周知啓発を行います。また、求職活動等に関するルールをあらかじめ明確化し、これを労働者及び求職者等 に周知・啓発することも必要です。求職者等に対しては、その規則を踏まえ、面談等に関する留意事項をホームページやパンフレット等の広報手段を用いて周知すること等があげられています。加えて、相談窓口をあらかじめ定め、求職者等にパンフレット、ホームページ等によって周知することも求められます。

(1)事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

○ 事業主は、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントに関する方針の明確化、労働者及び求職者等に対するその方針の周知・啓発として、次の措置を講じなければならない。
 なお、周知・啓発をするに当たっては、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントの防止の効果を高めるため、その発生の原因や背景について労働者の理解を深めることが重要。その際、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントの発生の原因 や背景には、性別役割分担意識に基づく言動もあると考えられ、こうした言動をなくしていくことがセクシュアルハラスメントの防止の効果を高める上で重要であることに留意することが必要。

  1. 求職活動等におけるセクシュアルハラスメントの内容及び求職活動等における セクシュアルハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
    (事業主の方針を明確化し、労働者に周知・啓発していると認められる例)
    • 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントを行ってはならない旨の方針を規定し、当該 規定と併せて、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントの内容及び性別役 割分担意識に基づく言動がセクシュアルハラスメントの発生の原因や背景となり得ることを、労働者に周知・啓発すること。
    • 社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に求職活動等におけるセクシュアルハラスメントの内容及び性別役割分担意識に基づく言動がセクシュアルハラスメントの発生の原因や背景となり得ること並びに求職活動等におけるセクシュアルハラスメントを行ってはならない旨の方針を記載し、配布等すること。
    • 求職活動等におけるセクシュアルハラスメントの内容及び性別役割分担意識に 基づく言動がセクシュアルハラスメントの発生の原因や背景となり得ること並びに求職活動等におけるセクシュアルハラスメントを行ってはならない旨の方針を労働者に対して周知・啓発するための研修、講習等を実施すること。
  2. 求職活動等におけるセクシュアルハラスメントに係る性的な言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
    (対処方針を定め、労働者に周知・啓発していると認められる例)
    • 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、求職活動等 におけるセクシュアルハラスメントに係る性的な言動を行った者に対する懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発すること。
    • 求職活動等におけるセクシュアルハラスメントに係る性的な言動を行った者 は、現行の就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において定められている懲戒規定の適用の対象となる旨を明確化し、これを労働者に周知・啓 発すること。
  3. 求職活動等に関するルールをあらかじめ明確化し、これを労働者及び求職者等 に周知・啓発すること。
    (求職活動等に関するルールをあらかじめ明確化し、労働者及び求職者等に周知・ 啓発している例)
    • 労働者に対しては、面談時間及び場所の指定並びにやり取りに用いるSNSの種類の指定その他の求職者等と面談等を行う際の規則を定め、周知・啓発するための研修、講習等を実施すること。 また、求職者等に対しては、上記規則を踏まえ、面談等に関する留意事項をホームページやパンフレット等の広報手段を用いて周知等すること。
      なお、労働者に対する周知・啓発に当たっては、2の求職活動等以外の場面における求職者等に対する言動に必要な注意を払うよう、併せて周知することも考えられる。
(2)相談(苦情を含む。以下同じ。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

○ 事業主は、求職者等からの相談に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制の整備として、次の措置を講じなければならない。

  1. 相談への対応のための窓口(以下「相談窓口」という。)をあらかじめ定め、求職者等に周知すること。 なお、求職者等は人事担当者への相談をためらうことも想定されることから、相談窓口の担当者として人事担当者以外の者を指定することも考えられる。
    (相談窓口をあらかじめ定めていると認められる例)
    • 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、求職活動等 におけるセクシュアルハラスメントに係る性的な言動を行った者に対する懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発すること。
    • 相談に対応する担当者をあらかじめ定めること。
    • 相談に対応するための制度を設けること。
    • 外部の機関に相談への対応を委託すること。
      (求職者等に周知していると認められる例)
    • 求職者等に対し、パンフレット、ホームページ等によって、相談窓口を周知すること。
  2. 相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、相談窓口においては、被害を受けた求職者等(以下「被害者」 という。)が萎縮するなどして相談を躊躇する例もあること等も踏まえ、相談者の 心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも配慮しながら、求 職活動等におけるセクシュアルハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、 その発生のおそれがある場合や、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントに 該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応し、適切な対応を行うよう にすること。例えば、放置すれば求職活動等を阻害するおそれがある場合や、性別 役割分担意識に基づく言動が原因や背景となってセクシュアルハラスメントが生じるおそれがある場合等が考えられる。
    (相談窓口の担当者が適切に対応することができるようにしていると認められる例)
    • 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、求職活動等 におけるセクシュアルハラスメントに係る性的な言動を行った者に対する懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発すること。
    • 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、その内容や状況に応じて、相談窓口の 担当者と人事部門とが連携を図ることができる仕組みとすること。
    • 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、あらかじめ作成した留意点などを記載 したマニュアルに基づき対応すること。
    • 相談窓口の担当者に対し、相談を受けた場合の対応についての研修を行うこと。

Ⅱ マイナ保険証の導入・経過措置

マイナ保険証の導入による経過措置が、2025年12月1日までと聞きました。12月2日以降はどうなるのでしょうか。

現在使用されている健康保険証は2025年12月1日までとなります。それ以降はマイナ保険証、もしくは資格確認書での医療機関受診となります。解説をご確認ください。

マイナ保険証の導入・経過措置

1.資格確認書とは

 資格確認書は、マイナ保険証を保有していない(マイナンバーカードの健康保険証利用登録をしていない等)方に交付されます。また、マイナンバーカードでの受診等が困難な配慮が必要な方(ご高齢の方、障害をお持ちの方など)は、加入している医療保険者に申請すれば資格確認書を取得できます。親族等の法定代理人や介助者等による代理申請も可能です。
 今回の保険証廃止に伴い、保険証が発行されていて、マイナ保険証を保有していない方には、協会けんぽもしくは健康保険組合よりすでに資格確認書の発送が行われています。下記の表は一例です。ご加入の組合のHPなどで発送時期などはご確認ください。

組合名 対応 資格確認書の有効期限
協会けんぽ マイナ保険証をお持ちでない方(令和7年4月30日時点)に向けて令和7年7月下旬より順次、資格確認書を被保険者住所に送付 交付年月日から 4年経過後に初めて到来する11月30日
東京薬業健康保険組合 資格確認書の交付対象となる方(9月26日(金)時点)に、10月31日(金)から事業所経由で交付 令和10年3月31日
東京都情報サービス産業
健康保険組合(TJK)
令和7年10月30日(木)にマイナ保険証をお持ちでない方に向けて事業所経由で資格確認書を送付 発行年度から3年目の3月末日

<職権により資格確認書が交付される方>

  • マイナンバーカードを取得していない方
  • マイナンバーカードを取得しているが、健康保険証利用登録を行っていない方
  • マイナ保険証の利用登録解除を申請した方・登録解除者
  • マイナンバーカードの電子証明書の有効期限切れの方
  • 後期高齢者医療制度にご加入の方や、新たに加入される方(令和8年7月末までの暫定措置)※

2.2025年12月2日以降について

 令和7年12月2日からは、医療機関受診時にはマイナ保険証か資格確認書を提示いただくこととなります。
 医療機関・薬局の受付では、マイナ保険証をお持ちの方は「マイナ保険証」を、マイナ保険証をお持ちでない方は「資格確認書」の提示となります。基本的に現行の保険証は12月2日以降使えなくなります。協会けんぽや健康保険組合への返却の必要はなく、ご自身で廃棄可能です。最近になり、2026年3月末までは暫定的に期限切れ健康保険証を受診時に利用できる方針がニュースで報じられましたが、健康保険証の有効期限は12月1日までと変わりません。不正利用防止のため、廃棄の際はハサミを入れるなどのご対応をお願いいたします。
 また、2025年12月1日までの期間の退職の場合は今まで通り保険証返却が必要です。そのため、保険証を無くした場合は、滅失届の提出も必要です。なお、2025年12月2日以降は有効期限内の場合、資格確認書の回収は引き続き必要です。

証明書 期間 資格喪失、氏名変更等の際の
返却の有無
現行の健康保険証 ~2025/12/1 必要
2025/12/2~ 不要
資格確認書 2025/12/2~ 有効期限内は必要、

【手続ご担当者様への今後のお願い】

 従業員の皆様へ、12月2日以降保険証使用不可の件を、事前に周知いただきますようお願いいたします。
 また、引き続き、新規取得の手続依頼書に、「資格確認書希望の有無」をお知らせください。職権での発行にはかなりの時間を要するため、「資格確認書希望有り」として取得申請することで、「資格確認書」が速やかに発行されます。ご本人様はもちろん、被扶養者様についても同様にお知らせいただく必要があります。12/2以降は資格確認書の発行があった方のご退職の場合は、手続依頼とともにその旨お知らせください。資格確認書の発行有の方については回収の必要がありますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。